なぜ真面目に働いても豊かにならないのか|給与・物価・社会保険料のズレという現実

つくる

昇給しているはずなのに、生活は楽にならない。
節約しているのに、余裕が増えた実感もない。

「前より頑張っている気がするのに、なぜか苦しい」

多くの人が、ここ数年で同じ感覚を持つようになりました。
これは気のせいではありません。

個人の努力や家計管理の問題ではなく、給与の伸び方と、支出・負担の増え方が噛み合わなくなっているからです。

この記事では、「なぜ真面目に働いても豊かさを感じにくくなったのか」を構造的に整理し、
そこから自然に「働き方をつくり直す」という選択肢につなげていきます。

給与は本当に伸びているのか

「給料が上がらない」と言われがちですが、正確には、給料は少しずつ上がっています

多くの企業で定期昇給は続いており、名目賃金だけを見れば、横ばいか微増です。

ただし問題は、その伸び方です。

・年に数千円〜1万円程度
・昇給しても生活が変わるほどではない
・賞与は不安定

つまり、上がってはいるが、意味を感じにくい水準なのです。

しかも、その「わずかな増加」は、このあと説明する別の要素に吸収されていきます。

物価は静かに、確実に上がっている

一方で、生活に必要な支出はどうでしょうか。

  • 食料品
  • 光熱費
  • 日用品
  • 外食
  • サービス料金

これらは、ここ数年で確実に上がっています。

しかも厄介なのは、「一気にドンと上がる」のではなく、少しずつ、気づかない形で上がることです。

・内容量が減る
・サービスが簡素化される
・値段だけが上がる

こうした「実質値上げ」は、家計の固定費に近い部分をじわじわ圧迫します。

結果として、

生活の最低ラインそのものが上がっている

という状態になります。

ここでもう一つ、重要な視点があります。

それが「購買力」です。

たとえ手取りの金額が変わっていなくても、物価が上がれば、そのお金で買えるモノやサービスの量は減ります。
これを「購買力の低下」と呼びます。

今、私たちが直面しているのは、「手取りが伸びにくい」ことと「購買力が落ちている」ことのダブルパンチです。

つまり、同じ給料・同じ働き方を続けているだけでも、相対的には、少しずつ余裕を失っている状態にあります。

苦しく感じるのは、感覚の問題ではありません。
数字の上でも、そうなりやすい構造になっているのです。

見落とされがちな「社会保険料」という壁

さらに見逃されがちなのが、社会保険料の存在です。

給料が少し上がると、

・健康保険料
・厚生年金
・介護保険料(年齢によって)

これらも自動的に増えます。

ここがポイントです。

給与が上がるほど、天引きも増える構造になっています。

その結果、

・額面は増えた
・でも手取りはあまり変わらない

という現象が起きます。

税金よりも、社会保険料の影響を強く感じる人が増えているのは、このためです。

ここで、一つだけ言葉を整理しておきます。

私たちが実際に使えるお金、つまり「手取り」は、専門用語では「可処分所得」と呼ばれます。

可処分所得 = 給与(額面) − 税金 − 社会保険料

重要なのは、私たちが戦っているのは「給与を増やすゲーム」ではないという点です。
本当の勝負は、この可処分所得をいかに減らさず、増やすかです。

名目賃金が少し上がっても、物価や社会保険料がそれ以上に上がれば、可処分所得はむしろ減ります。
「頑張っているのに楽にならない」という感覚は、ここから生まれています。

問題は努力ではなく、ルールそのものです。

さらに、忘れてはいけないのが税金の仕組みです。

所得税は「累進課税」といって、収入が増えるほど税率も上がります。
つまり、頑張って年収を上げても、その増分すべてが自由に使えるわけではありません。

特に一定ラインを超えると、
「昇給したのに、思ったほど手取りが増えない」
という現象がはっきり体感されます。

この仕組みもまた、真面目に働くほど報われにくいと感じやすい理由の一つです。

なぜ個人の努力だけでは追いつかないのか

ここまでを整理すると、こうなります。

・給与:ゆっくり増える
・物価:着実に上がる
・社会保険料:自動的に増える

この3つが同時に進むと、どうなるか。

生活を維持するだけでエネルギーを使い切る状態になります。

節約しても、
昇給しても、
「余白」がなかなか生まれません。

ここで大事なのは、これは怠けや能力不足の問題ではない、という点です。

構造の問題です。

働き方を「つくる」という発想

この状況で重要になるのは、収入を一つの前提に固定しないことです。

これは、不満からの逃避ではありません。

リスク管理の話です。

・会社の給与テーブルに100%依存しない
・収入源を分散する
・将来の選択肢を増やす

副業も、転職も、スキル習得も、すべてこの延長線上にあります。

「もっと稼ぐ」よりも先に、

すり減らない構造をつくる

という発想です。

働き方をつくるための3つのステップ

① 現状を把握する
まずは給与明細を見て、額面・社会保険料・手取りを確認します。
どこで削られているのかを知るだけで、見え方は変わります。

② 種をまく
小さな副業やスキル習得で、「会社以外の収入源」を試します。
結果よりも、「試せたかどうか」が大切です。

③ 環境を選び直す
必要であれば、業界や職場を変える選択肢も持ちます。
すぐ動かなくても、「選べる状態」でいることが重要です。

副業は「稼ぐため」だけのものではない

副業というと、どうしても「お金を増やす手段」として語られがちです。

でも実際には、

・収入の補助
・スキルの実験
・市場価値の確認

といった意味合いも大きい。

小さく始める副業は、将来の保険でもあります。

今すぐ大きな成果が出なくても、「選べる状態」に近づくこと自体に価値があります。

もう一つ、あまり語られない副業の側面があります。

それは、「税金との向き合い方が変わる」という点です。

給与所得は、基本的に天引きされるだけです。
自分でコントロールできる余地はほとんどありません。

一方、副業で得た収入は、内容によっては「事業所得」として扱われます。
そこでは、経費という概念が生まれます。

もちろん、無理な節税を勧める話ではありません。
ただ、「稼ぎ方によって、税金のかかり方が変わる」という事実を知っているかどうかで、
可処分所得の残り方は大きく変わります。

副業は、収入だけでなく“構造”を変えるきっかけにもなります。

ただし、副業を始める際に一つだけ注意したい点があります。

それは、会社員と同じ「時間の切り売り」だけを増やさないことです。

疲れたあとに、時給制のアルバイトを積み重ねると、一時的に収入は増えても、消耗はさらに加速します。

せっかく働き方をつくるなら、
・スキルが蓄積されるもの
・経験が次につながるもの
・仕組みとして回る可能性があるもの

こうした要素を少しでも含む副業を選びたいところです。

すぐに結果が出なくても、「将来の可処分所得を押し上げる種」になっていれば、それは十分に意味のある一歩です。

転職も「逃げ」ではない

転職についても同じです。

・今の職場が合わない
・給与が頭打ち
・評価基準が不透明

こうした理由で転職を考えることは、決して後ろ向きではありません。

それは、給与の決まり方そのものを変える選択です。

もう一つ重要なのは、「どの会社にいるか」以上に、「どの業界にいるか」で給与水準の大部分が決まるという現実です。

同じ努力、同じスキルでも、成長している業界と、縮小している業界では、報われ方がまったく違います。

これは個人の優劣の話ではありません。
業界全体の労働生産性の差です。

転職とは、職場を変えることではなく、努力が反映されやすいフィールドに移ること。

そう捉えると、前向きな「つくる」行動に見えてきます。

努力しても反映されにくい構造から、反映されやすい構造へ移る。

これも立派な「つくる」行動です。

まとめ|真面目に働くことを否定しないために

収入源を分散させることは、投資でいう「分散投資」と同じです。

資産も、働き方も、一つに依存しない。
それが、不確実な時代を生き抜くための、もっとも現実的な防御になります。

今の苦しさは、あなたの努力不足ではありません。

給与、物価、社会保険料のズレという、構造の問題です。

だからこそ、

・自分を責めない
・仕組みを理解する
・働き方を設計し直す

という視点が大切になります。

副業や転職は、「成功するため」だけのものではありません。

消耗し続けないための選択肢です。

真面目に働くことを否定しないために、働き方を「つくる」。

それが、今の時代に合った向き合い方だと思います。


サラリーマンを「副業」にしよう [ 俣野成敏 ]

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