投資に興味はある。
でも、いざ調べ始めると、よく分からない言葉が次々に出てくる。
元本、利回り、リスク、インデックス、ボラティリティ……
この時点で、「自分には無理そう」と感じてしまう人は少なくありません。
実は、投資が怖くなる最大の原因は、お金が減ることそのものではなく、「意味が分からない状態で判断させられること」です。
言葉の意味が分からないまま、
・上がったから買う
・下がったから売る
・不安だからやめる
こうした判断を迫られると、人は強いストレスを感じます。
この記事では、投資用語を「覚える」ためではなく、投資に振り回されないための道具として整理していきます。
やる・やらないを決めるのは、そのあとで構いません。
まずは「判断できる状態」をつくることから始めましょう。
投資・投機・資産運用の違いを先に整理する
最初に混乱しやすいのが、この3つの言葉です。
投資
時間をかけて、お金や価値を育てていく行為です。
短期の値動きより、長い期間での積み重ねを重視します。
投機
短期間の価格変動を狙う行為です。
うまくいけば大きな利益が出ますが、外れれば大きな損失になる可能性があります。
資産運用
投資・貯蓄・保険などを含めて、
「お金全体をどう管理するか」という考え方です。
多くの初心者が不安になるのは、投資のつもりで、投機的な話を見てしまうことが原因です。
言葉の前提をそろえるだけで、情報の見え方は大きく変わります。
元本・評価額・含み損は「途中経過」の言葉
元本
最初に投じたお金そのものです。
例:10万円を投資した場合、その10万円が元本です。
評価額
今の時点での見積もり金額です。
まだ売っていない限り、確定した金額ではありません。
含み益・含み損
評価額が、元本より増えている/減っている状態を指します。
例えば、10万円を投資して、現在の評価額が8万円なら「含み損2万円」。
12万円なら「含み益2万円」です。
ここで重要なのは、含み損=失敗ではないという点です。
含み損は、あくまで途中経過。
まだ終わっていない状態を「途中」として受け止められるかどうかが、投資との付き合い方を大きく左右します。
確定利益・確定損失は「終わった後の言葉」
確定利益・確定損失とは、実際に売って、結果が確定した状態を指します。
含み損は戻る可能性がありますが、確定損失は「そこで終わり」です。
この違いを理解していないと、
・少し下がっただけで不安になる
・必要以上に売買を繰り返してしまう
といった行動につながりやすくなります。
リスクとは「危険」ではなく「ブレ幅」
投資で最も誤解されやすい言葉が「リスク」です。
リスクとは、結果がどれくらいブレる可能性があるかという意味です。
例えば、
・株式:値動きが大きく、ブレ幅(リスク)が大きい
・預金:ほとんど値動きがなく、ブレ幅(リスク)が小さい
これは「安全・危険」という話ではありません。
リスクを理解することは、危険を避けることではなく、想定外を減らすことです。
リスクを「危険」と誤解したまま投資をすると、値動きが出た瞬間に「想定外だ」と感じてしまいます。
しかし本来、値動きは最初から起こる前提で存在しています。
リスクを理解するとは、「起こり得る範囲をあらかじめ知っておくこと」です。
それができていれば、値下がりはパニックの材料ではなく、想定内の出来事として受け止められるようになります。
利回りは「期待しすぎないための指標」
利回りとは、どれくらいのペースで増減したかを表す目安です。
例えば、10万円が1年後に11万円になった場合、利回りは約10%です。
ただし、利回りは将来を保証する数字ではありません。
過去の利回りが高くても、これからも同じとは限らない。
利回りは「比較のための道具」であって、目標にして追いかけるものではありません。
長期・積立・分散は「正解」ではなく「設計」
長期投資
長期投資とは、「長い時間をかけて結果を受け取りにいく」という考え方です。
短期的な値上がり・値下がりを当てることよりも、続けることで起きる平均化や成長を味方につけることを重視します。
例えば株式市場は、年単位・月単位で見れば上下を繰り返しますが、数十年単位で見ると、経済成長とともに拡大してきました。
長期投資の本質は、「いつ上がるかを当てること」ではなく、途中のブレを許容できる設計をつくることにあります。
誤解されがちなのは、「長期で持てば必ず儲かる」という理解です。
実際には、
・途中で不安になって売ってしまう
・想定以上の下落に耐えられない
といった理由で、長期を貫けない人も多くいます。
長期投資とは、期間の問題ではなく、考え方と覚悟の問題です。
積立投資
積立投資とは、一定の金額を、一定のタイミングで買い続ける方法です。
例えば、毎月1万円ずつ同じ商品を買うことで、価格が高いときは少なく、安いときは多く買う形になります。
これは「安く買う」ための手法ではなく、価格を予想しなくても済む状態をつくるための仕組みです。
多くの初心者が失敗するのは、「今は高いか?安いか?」を考え続けて、結局動けなくなることです。
積立投資は、その判断そのものを手放すための方法とも言えます。
ただし、積立も万能ではありません。
相場が下がっている期間は、評価額が下がり続けることもあります。
そのときに「積立しているのに減っている=失敗」と感じてしまうと、仕組みの意味が崩れてしまいます。
積立投資は、感情を介さずに投資を続けるための設計です。
分散投資
分散投資とは、一つの資産、一つの国、一つの企業に集中しない考え方です。
例えば、
・株式だけでなく債券も持つ
・一社ではなく複数の企業に分ける
・一国ではなく世界全体に投資する
といった形で、影響を分散させます。
重要なのは、分散=リスクゼロではないという点です。
分散投資の目的は、「損をしないこと」ではなく、想定外の事態で一気に崩れるのを防ぐことです。
分散は保険に近い考え方で、効いているときほど、その効果は実感しにくいものです。
これら三つは、「やれば必ず成功する正解」ではありません。
判断を安定させるための設計思想です。
投資信託・ETF・インデックス投資の位置づけ
投資信託
投資信託とは、多くの人から集めたお金をまとめて運用する仕組みです。
個人では難しい分散投資を、少額から自動的に行えるのが最大の特徴です。
一方で、
・運用方針は自分で決められない
・手数料がかかる
といった側面もあります。
投資信託は、「自分で細かく判断し続ける時間をお金で買う仕組み」とも言えます。
ETF
ETFは、投資信託を株式のように売買できる形です。
投資信託と同じように分散された中身を持ちながら、株と同じように市場で売買できます。
価格がリアルタイムで動くため、売買タイミングを自分で判断したい人向けです。
ただし、その分「価格の上下を見てしまう」ことで、感情的な判断につながりやすい側面もあります。
インデックス投資
インデックス投資とは、特定の企業ではなく、市場全体の動きに連動させる考え方です。
「どの企業が伸びるか」を当てるのではなく、経済全体が成長する前提に賭ける投資です。
当たり外れはありませんが、平均以上を狙うこともありません。
その代わり、「外すリスク」を最小限に抑える設計になっています。
投資でよく出てくる実務用語を整理する
銘柄
銘柄とは、投資対象そのものの名前です。
株式なら企業名、投資信託やETFなら商品名を指します。
「何に投資しているのか」を正確に把握するための、最も基本的な言葉です。
配当
配当とは、企業が利益の一部を株主に分配するお金です。
株を保有しているだけで受け取れるため、長期保有との相性が良い収入です。
ただし、配当は必ず出るものではなく、減ることも止まることもあります。
インカムゲイン/キャピタルゲイン
インカムゲインは、保有中に継続して得られる収入(配当など)。
キャピタルゲインは、売却時に得られる値上がり益です。
どちらを重視するかで、投資スタイルは大きく変わります。
EPS(1株あたり利益)
EPSとは、企業が稼いだ利益を1株あたりに換算した数字です。
EPSが伸びている企業は、事業として利益を積み上げられていると考えられます。
株価は短期的に上下しますが、長期的にはEPSの成長と連動しやすい傾向があります。
EPSは、「企業の稼ぐ力が伸びているかどうか」を見るための基本的な指標です。
PER(株価収益率)
PERとは、株価が企業の利益に対して何倍まで買われているかを見る指標です。
計算式は「株価 ÷ 1株あたり利益(EPS)」です。
例えば、
・株価が2,000円
・EPSが200円
であれば、PERは10倍になります。
PERが低いほど「利益に対して割安」と言われることがありますが、必ずしも「低い=良い」「高い=悪い」ではありません。
成長が期待されている企業は、将来の利益を見込まれてPERが高くなることもあります。
PERは、「今の利益水準に対して、どれくらい期待が織り込まれているか」を見るための指標です。
PBR(株価純資産倍率)
PBRとは、企業の純資産に対して株価が何倍かを示す指標です。
計算式は「株価 ÷ 1株あたり純資産(BPS)」です。
PBRが1倍を下回る場合、理論上は「会社を解散して資産を分けた方が株価より価値が高い」
という状態を示します。
ただし、収益性が低い企業や成長が見込めない企業では、PBRが低いまま放置されることも珍しくありません。
PBRは、「資産に対して市場がどれくらい評価しているか」を見るための指標です。
ROE(自己資本利益率)
ROEとは、株主から預かったお金(自己資本)を使って、どれだけ効率よく利益を出しているかを示す指標です。
ROEが高い企業は、少ない資本で効率よく利益を生み出していると評価されます。
ただし、借金を増やすことでROEだけが高く見える場合もあるため、単独で判断するのは危険です。
ROEは、「経営の効率性を見るための指標」として使われます。
損切
損切とは、損失が広がる前に、自分で区切りをつける判断です。
失敗ではなく、想定外が起きたときのルールです。
事前に決めていない損切は、感情に流されやすくなります。
信用取引
信用取引は、借りた資金や株を使って取引する方法です。
利益も損失も大きくなりやすく、仕組みが複雑なため、初心者向けではありません。
NISAは「儲ける制度」ではない
NISAは、投資で得た利益に税金がかからない制度です。
NISAを使えば、利益は非課税になりますが、投資そのもののリスクが消えるわけではありません。
制度を理解したうえで、使うかどうかを選べる状態になりましょう。
まとめ|投資用語は判断力を育てるための道具
投資用語は、暗記するためのものではありません。
・誤解しないため
・焦らないため
・他人の意見に流されないため
そのための「翻訳ツール」です。
投資用語を理解すると、分からないから怖いという状態から、分かるから選べる状態に変わります。
投資とは、お金を増やす技術である前に、判断を育てる行為です。
まずは、言葉が分かる状態を育てること。
投資を始めるかどうかは、そのあとで十分です。
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