「最近、生活が少し苦しくなった気がする」
そう感じる人は増えています。
特別な贅沢をしているわけでもなく、収入が大きく減ったわけでもない。
それでも、じわじわと余裕がなくなる。
この正体が、インフレ(物価上昇)です。
インフレは、急にお金を奪うものではありません。
音もなく、少しずつ、お金の力を弱めていく現象です。
インフレとは何が起きている状態なのか
インフレとは、モノやサービスの価格が全体として上がり続ける状態を指します。
別の言い方をすると、
同じ金額で買える量が、年々減っていく
ということです。
たとえば、
- 昔は100円で買えたものが120円になる
- 1,000円で足りた買い物が、今は1,200円必要になる
これは、お金の価値が下がったと捉えることもできます。
インフレ率が意味するもの
インフレの進み具合は「インフレ率」で表されます。
仮に年2%のインフレが続いた場合、
- 今の100万円の価値は
- 1年後には98万円分
- 10年後には約82万円分
- 20年後には約67万円分
になります。
重要なのは、
- 口座の数字は変わっていない
- でも、使える力は確実に落ちている
という点です。
インフレというと、「一時的な値上げ」「一過性の現象」と考えがちです。
しかし実際には、一度上がった物価が元に戻ることは多くありません。
- 原材料費の上昇
- 人件費の上昇
- エネルギーコストの上昇
これらは連動しており、どれか一つが下がっても、全体が元に戻るとは限らないからです。
つまり、インフレはイベントではなく、環境の変化として捉えた方が現実に近いと言えます。
預金は安全だが、万能ではない
銀行預金は、
- 元本が減りにくい
- いつでも引き出せる
という意味で、とても優れた保管場所です。
ただし、インフレがある世界では「安全=価値が守られる」ではありません。
金利がほぼゼロに近い状態で物価が上がり続けると、
預金しているだけで、実質的には目減りしていく
という状況になります。
これは誰かが悪いわけではなく、インフレという仕組みの中では自然な結果です。
投資にはリスクがあります。一方で、投資をしないことにも別のリスクがあります。
それが、
- インフレによる実質的な目減り
- 選択肢が限られていくこと
- 将来の対応力が下がること
です。
ここで言う「リスク」とは、不安を煽るための言葉ではありません。
選択肢が減ることそのものが、リスクになります。
だからこそ、
- 投資をする
- 投資をしない
どちらを選ぶにしても、「理解したうえで選ぶ」ことが重要になります。
投資の役割を勘違いしない
投資という言葉には、
- 儲ける
- 増やす
- リスクが高い
といった印象がつきまといます。
しかし、インフレとの関係で見ると、投資の役割はもっと地味です。
投資とはお金を「使わない場所」に置いたまま、価値だけを維持・成長させる仕組み
つまり、
- 投資=攻め
ではなく - 投資=防衛+育成
という側面が強くなります。
投資にはリスクがある
ここまで読むと、「投資はインフレ対策として合理的」と感じたかもしれません。
ただし、ここで一つ、はっきりさせておく必要があります。
投資にリスクがないわけではありません。
投資のリスクとは、「必ず損をする」という意味ではなく、
- 価格が上下する
- 一時的に評価額が下がることがある
- 短い期間では結果が出ないことがある
といった不確実性のことです。
特に株式を含む投資信託では、
- 景気後退
- 金利変動
- 世界情勢の変化
などによって、価格が下がる局面は必ず訪れます。
重要なのは、リスクをなくすことではなく、扱える形にすることです。
- 一つの商品に集中しない
- 一度にまとめて投資しない
- 生活に必要なお金を使わない
- 短期の値動きで判断しない
こうした設計によって、投資は「危ないもの」から「管理できるもの」に変わります。
インフレに強い資産の共通点
インフレに対応しやすい資産には、共通した特徴があります。
実体経済と結びついている
企業の利益や資産は、物価上昇とともに増えやすい。
一国に依存しない
特定の国や通貨の価値下落に巻き込まれにくい。
長期で保有できる
短期の価格変動より、時間の力を活かせる。
この条件を比較的満たしやすいのが、株式を中心とした投資信託です。
投資信託という選択肢
投資信託は、
- 多くの企業にまとめて投資できる
- 少額から始められる
- 定期的に積み立てられる
という特徴があります。
個別株のように銘柄選びで悩む必要がなく、平均点を取りにいく投資に向いています。
具体的な商品例
インフレ対策として長期で使われることが多い商品には、次のようなものがあります。
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
世界中の株式市場に分散投資
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
米国の主要企業500社に投資
いずれも低コスト商品で、長期保有を前提に設計されています。
証券口座とNISA口座の関係
ここは混同されやすいポイントなので、整理します。
- 証券口座
→ 投資を行うための「入れ物」 - NISA口座
→ 証券口座の中に作る「非課税の枠」
つまり、
証券口座がなければ、NISA口座も作れない
という関係です。
なぜNISAを使うのか
投資で得た利益には、本来税金がかかります。
NISA口座では、この税金がかかりません。
インフレ対策として投資を行う場合、
- 利益を最大化するより
- 減らさずに残す
ことが重要になります。
その意味で、NISAはインフレ対策と非常に相性が良い制度です。
口座開設は現実的な一歩
NISAを使うためには、証券口座の開設が必要です。
代表的なのが、
- SBI証券
- 楽天証券
いずれも、
- 取扱商品が多い
- 手数料が低い
- 積立設定がしやすい
という点で、初心者にも使いやすい証券会社です。
投資金額は「適切な額」で
よく「少額から始めましょう」と言われますが、より正確にはこう考えるべきです。
家計と目的に合った金額で始める
- 生活費や生活防衛資金を確保したうえで
- すぐに使う予定のないお金の中から
- 継続できる金額を設定する
月1,000円でも、月1万円でも、正解は人によって違います。
大切なのは、途中でやめなくて済む設計です。
金額を決めるときの一つの目安
金額に正解はありませんが、考え方の軸は持てます。
たとえば、
- 生活費:短期で使う → 預金
- 近い将来の支出:数年以内 → 安全重視
- 10年以上使わないお金 → 投資に回す候補
このように、お金を時間で分けて考えると整理しやすくなります。
投資しない選択も否定しない
投資は義務ではありません。
やらないという判断も、立派な選択です。
ただし、
- 何となく怖いから
- よく分からないから
という理由で止まっている場合、それは「選択」ではなく「保留」に近い状態です。
インフレが続く環境では、保留=現状維持ではありません。
まとめ|インフレに備えるという考え方
- インフレはすでに起きている
- 預金だけでは価値は守りきれない
- 投資は増やすためだけのものではない
- 証券口座+NISAは合理的な手段
- 金額は家計と目的に合わせて決める
派手な投資は必要ありません。
必要なのは、
インフレに負けない場所を、自分なりに一つ用意しておくこと
それだけです。
僕たちはまだ、インフレのことを何も知らない デフレしか経験していない人のための物価上昇2000年史 [ スティーヴン・D・キング ]








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