昇給しているはずなのに、手取りは増えない。
節約しているのに、なぜか余裕が出ない。
税金の通知が来るたびに、
「こんなに払っていたっけ?」
とモヤっとした気持ちになる人は多いはずです。
特に会社員の場合、税金や社会保険料は「知らないまま自動的に引かれる固定費」になりがちです。
この記事では、税金の基本的な仕組みを整理したうえで、税金で消耗しないための家計の整え方を解説します。
まず知っておきたい税金の全体像
税金の話が分かりにくく感じる最大の理由は、「自分が何にいくら払っているのか」が見えにくいことです。
まずは全体像を整理します。
所得税|国に払う税金
所得税は、国に納める税金です。
- 給与から天引き
- 年収が上がるほど税率が上がる(累進課税)
- 年末調整や確定申告で調整される
「税金」と聞いて真っ先に思い浮かべるのは、この所得税かもしれません。
ただし、実感として一番重いのは、実はここではありません。
住民税|自治体に払う税金
住民税は、都道府県・市区町村に払う税金です。
- 前年の所得をもとに計算
- 6月から翌年5月まで支払う
住民税は、「所得割(所得に対して約10%)」と「均等割(数千円)」で構成されています。
所得税のような累進課税ではなく、所得に対してほぼ一定割合でかかるのが特徴です。
ポイントは、「去年の収入」に対して、今年払っているという点です。
そのため、
- 収入が下がっても、すぐには減らない
- ボーナスが減っても、一定額が引かれる
こうしたズレが、「苦しさ」を生みます。
・昇給した翌年
・転職・退職した直後
・育休や時短勤務に入った年
こうしたタイミングで、
「今の収入」と合わない住民税がのしかかることがあります。
特に退職後は、給与が入っていないのに住民税だけは請求される、というケースも珍しくありません。
これを防ぐ考え方が、「未来の住民税を、今から予約しておく」という発想です。
前年の収入をもとに、来年払う住民税をざっくり見積もり、月割りで積み立てておく。
税金は突発ではありません。
予測できるコストです。
毎年6月頃、会社から小さな細長い紙(住民税決定通知書)を渡されるはずです。内容を見ずに捨ててしまう人もいますが、これは『あなたの1年間の家計コストの確定書』です。ここに書かれている年額を12で割った数字が、来年5月まで毎月必ず引かれる金額です。この紙をスマホで写真に撮っておくだけでも、家計の予測精度は劇的に上がります。
社会保険料|税金に近い固定費
厳密には税金ではありませんが、家計への影響という意味では、税金以上に重い存在です。
- 健康保険
- 厚生年金
- 介護保険(年齢による)
給与が上がると、自動的に増えます。
しかも、
- 労使折半で実感しづらい
- 税率が分かりにくい
結果として、「気づかないうちに負担が増えている」と感じやすいのです。
社会保険料は、原則として毎年4〜6月の給与をもとに決まる「標準報酬月額」に基づき、1年単位で固定されます。
月々の残業代などで手取りは変わりますが、引かれる保険料そのものは予測可能な固定費です。
社会保険料を「整える」うえで、ぜひ知っておきたい実務的なポイントがあります。
それが、4月〜6月の給与で、その後1年間の社会保険料が決まるという仕組みです。
この3ヶ月間の平均給与をもとに「標準報酬月額」が決まり、原則として翌年まで保険料は固定されます。
つまり、
・この時期に残業が増える
・一時的に手当が重なる
こうした状況があると、その後1年間、ずっと保険料が高い状態が続くことになります。
もちろん、働くこと自体が悪いわけではありません。
ただ、「なぜ今年は手取りが減った気がするのか分からない」という人の多くが、この仕組みを知らずにいます。
社会保険料は、知っていれば予測でき、知らなければ不意打ちになる。
そういう性質のコストです。
なぜ税金は「管理できていない感覚」になるのか
税金がしんどく感じる理由は、金額そのものよりも扱われ方にあります。
天引きされている
税金や社会保険料は、自分で払っている感覚がありません。
気づいたときには、もう引かれている。
これは心理的にコントロール感を失いやすい状態です。
年に一度の「イベント」になっている
- 6月の住民税通知
- 年末調整
- 確定申告
税金を「年1イベント」として扱うと、毎回ショックを受けます。
本来は毎月発生しているコストなのに、まとめて認識するから、重く感じるのです。
家計に「居場所」がない
多くの家計簿では、
- 食費
- 光熱費
- 住居費
は管理されていても、税金が独立した項目になっていないことが多い。
結果として、
- 生活費が高いのか
- 税金が原因なのか
判断できなくなります。
税金は「減らす」より「整える」対象
ここで大切な視点があります。
税金は、原則として自分の意思では大きく減らせません。
だからこそ、
- 減らそうとする
- 裏技を探す
- 比較して落ち込む
よりも先にやるべきことがあります。
それが、整えることです。
整える① 税金を月割りで考える
税金は突発的な出費ではありません。
- 住民税
- 所得税
- 社会保険料
これらは、毎月発生している固定費です。
年額を把握し、12で割り、最初から「あるもの」として家計に組み込みます。
これだけで、心理的な負担はかなり減ります。
整える② 予備費と切り分ける
税金は「急な出費」ではありません。
予備費で対応しようとすると、
- 予備費が足りなくなる
- 想定外が増える
という状態になります。
税金は、予測できる支出として別枠で管理する。
これが、家計を壊さないコツです。
税金は『予測できる支出』です。これに対して、本当の『予測できない事態』に備えるのが予備費の役割です。
予備費の正しい作り方は、こちらの記事を参考にしてください。
整える③ 見える化する
給与明細を見て、
- 額面
- 税金
- 社会保険料
- 手取り
この4つを一度、書き出してみてください。
「思っていたより引かれている」と感じても、それは異常ではありません。
見えるようになっただけです。
給与明細を見るときは、次のポイントだけ確認すれば十分です。
・支給額合計(額面)
・所得税(国に払っている税金)
・住民税(自治体に払っている税金)
・健康保険・厚生年金(社会保険料)
・差引支給額(実際に使えるお金)
この中で、「税金」と「社会保険料」を分けて把握するだけで、家計の見え方は大きく変わります。
「整える」という視点で、もう一つ触れておきたいのが控除です。
iDeCo(小規模企業共済等掛金控除)や生命保険料控除などは、よく「節税」と呼ばれます。
ただ、ここでは少し違う見方をします。
これらは、税金として消えていくはずだったお金の行き先を、自分の資産形成や将来の安心へ振り替える仕組みです。
つまり、税金の「出口」を、国や自治体だけでなく、未来の自分にも向けているということです。
iDeCoについて知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
それでも苦しい人が次に考えること
税金を整えても、なお余裕が出ない人もいます。
その場合、問題は税金ではなく、可処分所得そのものです。
可処分所得とは、
給与 − 税金 − 社会保険料
で、実際に使えるお金のこと。
これを増やすには、
- 支出を極限まで削る
よりも - 収入の構造を変える
ほうが現実的な場合があります。
副業・転職は「攻め」ではなく防御
副業や転職というと、「もっと稼ぐため」と思われがちです。
ですが本質は、
- 収入源を分散する
- 給与テーブルへの依存を下げる
- 選択肢を増やす
という防御的な行動です。
税金を整えた上で、なお苦しいなら、働き方そのものを整える段階に来ています。
副業、転職に興味がある方は、下記の記事をご覧ください。
まとめ|税金は敵ではない
税金は高い。
確かにそう感じる場面は多いです。
でも、税金そのものが敵なのではありません。
- 見えないこと
- 予測できないこと
- 管理されていないこと
これが、しんどさの正体です。
税金を正しく理解し、家計の中にきちんと居場所をつくる。
それだけで、毎年のモヤモヤは確実に減ります。
税金は、避けるものではなく、整えて付き合うもの。
それが、「整える」という考え方です。
お金のこと何もわからないままフリーランスになっちゃいましたが税金で損しない方法を教えて下さい! [ 税理士・大河内薫 ]







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